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最高裁判所第一小法廷 昭和44年(オ)183号 判決 1970年7月16日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人三木仙太郎の上告理由第一について。

所論の点は、上告人が原審において何ら主張しなかつたところであるから、原審がこの点について判断しないことに所論の違法はなく、論旨は採用しえない。

同第二について。

原審の確定した事実関係のもとにおいては、上告人が被上告人に対し、第一審判決末尾添付の第二物件目録記載の建物(以下旧建物という。)の滅失登記手続をなすべきことを請求しえない旨の原審の判断は正当であつて、所論の違法は認められず、論旨は採用しえない。〔なお、原審の確定した事実関係によれば、旧建物は、昭和九年はじめ頃上告人によつて取りこわされて滅失し、すでに存在せず、同じ土地上に建築されている第一審判決添付の第一物件目録(二)記載の建物(以下新建物という。)とは同一性がない(しかも、新建物については、すでに上告人名義の保存登記が了されている。)というのであるから、旧建物についてされている登記については、滅失の登記がなされるべきである。しかし、この登記は、建物の表示に関する登記であるから、不動産登記法二五条ノ二に基づき登記官が職権をもつて調査してなすべき登記である(同法九三条ノ六は、建物が滅失した場合に、一定の者に対して登記官の職権の発動を促す申請をすることを義務づけた規定であるが、この規定があることにより、他の利害関係人の職権の発動を促す申出を否定する趣旨ではない。)。したがつて、本件事案においては、上告人が被上告人に対してその滅失登記手続をなすべきことを訴求する利益はないというべきである。〕

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 大隅健一郎 裁判官 入江俊郎 裁判官 長部謹吾 裁判官 松田二郎 裁判官 岩田 誠)

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